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加藤大博展
名称 特別展 DAIHAKU KATO
加藤大博展
復活と再生のタマゴたち
会期 2011年9月14日[水]~ 10月2日[日]
こちらの展覧会は終了致しました
開館時間 午前10時~午後4時 土・日曜日は午後6時まで
(入館は閉館時間の30分前まで)
休館日 月・火曜日(9月19日, 20日, 26日, 27日)
入館料 500円
主催
企画
財団法人岩田洗心館
三頭谷鷹史

加藤大博は、1950年代後半から活動を続けている現代美術家である。その彼が20年ほど前から取り組んでいるのがタマゴを基本形とする作品で、今では大博タマゴとして親しまれている。平面、立体、モニュメント、インスタレーションといったように、大博タマゴの展開幅は広い。さらに近年は、コンピューターを使って制作している。その背景にあるのが版画であり、コンピューターを「版」に見立てた版画だと言ってもよいだろう。彼はこれらの作品をジグレ版画(注)と呼ぶ。もともと版画分野でも知られた作家であり、ジグレ版画はその延長、あるいは新たな開拓という位置にある。それだけにコンピューターの利便性に寄りかかったのではない、非常に密度の高い、優れた作品群が生み出されているのである。

タマゴは、単純な形なのだが、そのまま生命力の象徴であり、誕生の神秘や生殖のエロス、愛らしいユーモアといった、意外なほど複雑なイメージを内包している。これらのイメージに触発されながら、加藤はさらなるイメージの増殖と爆発を導き、一種の幻覚的な絵画世界を創り出す。

生命力、それは巨大なエネルギーを秘めているが、魔ともなり、希望ともなる。加藤は「原爆という20世紀が生んだ化け物と向き合ってきた」と語る。少年期に日本の敗戦を体験し、日本がガレキの中から復活再生していく姿を見つめながら育った。強い錯視効果をともなう1960年代後半の「ヒロシマ」シリーズは、日本のオプティカル・アートの作例であるとともに、ヒロシマに象徴される悲劇と、戦後の復興や高度成長の時代精神を映し出している。その後の作品、そして大博タマゴにも「ヒロシマ」は潜んでいる。魔よりも希望へ向かって、悲劇を乗り越えねばならない。復活と再生をとげる力、その生命力への信頼が加藤作品のバックボーンだとすれば、東日本大震災後の日本の姿にも重なるのではないだろうか。

岩田洗心館は、改築によって本年4月に再スタートし、今回初めて現代美術展を開催する。小さな美術館ではあるが、なかなかの個性派であり、古民家風の美術館空間に大博タマゴが挑むことになる。

三頭谷鷹史(みずたにたかし/本展企画者・美術評論家)

(注)ジグレ版画: 加藤大博の造語、吹き付けて着色するという意味のフランス語ジークレー(Giclee)が語源。
   プリンターでの印刷手法を暗に表している。

加藤大博作品略歴

1936 名古屋市生まれ。1957 愛知学芸大学美術科前期卒業。

  • 1954~ 名古屋、東京、ポーランド、スペインなど国内外で個展25回開催。
  • 1954~ 前衛集団展、新制作展、現代日本美術展、シェル美術賞展、国際青年美術家展、Japan Art Festival、現代版画Nagoya展などに出品。1971 野外展「喜捨の会」、1972「72時間の行為」に企画参加(内海)。
  • 1984~ スペイン、スイス、ユーゴスラビア、ポーランド、ハンガリー、ブルガリア、ノルウェー、ドイツなどの国際美術展、国際版画展に出品。
  • 1988 名古屋港倉庫現代美術フェスティバル/名古屋を考える美術家の会企画/実行委員長(名古屋港)。
  • 1989 ポーランド/ワルシャワでのInternational EKO Art展に招待参加、併せて個展開催(ギャラリーDESA/ワルシャワ)。
  • 1996 「点によるタマゴ達」の作品で個展開催(ギャラリーないとう/名古屋)。ドイツ/フュルトでの平和への芸術展に参加「点によるタマゴ達」布による作品で野外インスタレーションを実施。スペイン/カダケスでダリの家前の入江ポルトリガット海上で布にプリントした作品「点によるタマゴ達」約60点を浮かべるインスタレーションを実施。
  • 2002 名古屋市千種文化小劇場オープニング記念こけら落とし「誕生・祈り」をテーマに3人のコラボレーションで舞台会場の造形を担当。
  • その他、国内外の企画展・グループ展などに多数参加。陶壁、緞帳、オヴジェなど公共空間への制作も多数設置。