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珈琲茶会
珈琲茶会

第12回 珈琲茶会

   

■こちらの講座は終了しました■
2018年4月22日(日)
午後1時30分 書斎カフェにて
初座1時間/後座(懇親会)1時間
会費五百円(入館料含む)

■本日のcoffee いつもの銘柄
  ■本日の茶菓子 実用とアートの共存から見る「書」 その2
  ■茶菓子提供者 肥田木朋子(元・財団法人かすがい市民文化財団学芸員)

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■茶菓子解説 

日本での文字を表現する書文化は大陸からの拓本類から伝わった書表現を手本にして、それをまねる「臨書」をベースにして発達したということを、前回の茶会で述べた。王羲之、唐の四大家、日本の三蹟と三筆の書を、その背景を含めて簡単に紹介したが、これらは現代で言うところの芸術作品という括りには入れにくい。
 古代において彼らが表した書は、「手」と呼ばれる能書の技とでも言うべきものである。彼らの「手」は、より美しく、より発展的にと工夫を凝らし変化していることには変わりは無い。が、現在残されたものは碑文などの公的記録として書かかれたもの、手紙などの個人的やり取りのためのものがほとんどで、偶々その文字が素晴らしいが故に書かれた内容とは別に文字だけが写し取られ、拓本や双鈎填墨、臨書という方法を使って大量生産され、広まっていったものと捉えることができる。写真や印刷技術の無かった時代の複製品で、それを手本にして後の時代の人々が書表現を学ぶ手法が当たり前になっている。
 日本は奈良時代に日本に入ってきた中国の拓本などを臨書することから書表現が始まっている。臨書の文化とでも呼ぶべきか、現代まで古代中国の書を臨書することが書の基本、大原則である。絵画や彫刻に例えて言うなら、臨書は石膏デッサンに近いだろう。西洋絵画なら石膏デッサンは習作であり、発表すべき芸術作品ではない。西洋的考え方では芸術性の中にあるオリジナリティーを重視するからだ。ところが、デッサンと異なり、臨書は堂々と作品に分類される。これは西洋絵画と書の感覚の大きな違いの一つである。
 日本の書が西洋に向けて制作され、西洋的絵画の枠組みに近づく試みがなされた昭和時代にも、臨書が大切にされた。石膏デッサンのように繰り返し学ばれたのである。臨書で磨いた技術の蓄積を経て西洋的絵画の隣に並べることが可能な、新たな書表現が生み出された。しかし、その後、臨書が作品と呼ばれなくなったかというと、そうならないのが書の世界の興味深いところだと思う。
 「臨書」という独特の存在は現代まで脈々と受け継がれ、書を学ぶ人、書に携わる人は同じように臨書を続けている。しかし、昭和後半ごろから、機械で印刷する文字が一般化し始め、実用面での手書き文字は重視されなくなった。筆を持って書く経験の少ない人が増加し、書は身近なものではなくなり、アートのジャンルの一つとなって存続してきた。
 今回は、日本の書に大きな変革をもたらした昭和の書表現を振り返り、近代の書表現のその後の動きに触れたいと思っている。そこから見えて来る伝統的な書の世界とアートとしての書の世界のせめぎ合いについて考えを巡らせてみたいと思っている。それと同時に、現代の文字を使ったアート表現とアートとしての書の違いも明確になって来るのではないかと考えている。

肥田木朋子(ひだき・ともこ) 略歴

名古屋市生まれ。1999年10月より文化フォーラム春日井・文芸館(2000年より財団法人かすがい市民文化財団に移行)2005年3月まで勤務、文化フォーラム春日井の展覧会等を担当。「木のおもちゃの魅力展」「美術系学生選抜展 美系優秀」等の企画に参加。横浜市民ギャラリーなど3館巡回「今日の作家展2003図録に「新たなる「今日的なもの」を求めて」を執筆。「今日の作家展2004」の企画に参加、図録に「人の心に感じる」を執筆。書のまち春日井特別企画展「書」を企画、図録に「書作品と鑑賞者をつなぐ場の提供へ向けて」を執筆。退職後、2009年に「自分史―その彩なす心」展を企画。なお、書は故・藤田東谷、藤田金治に師事、篆刻は故・奥谷九林に師事した。

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過去の珈琲茶会
第1回 2016年2月28日 松永直幸(鉄道史学会会員) これからの消費について考える
第2回 2016年4月17日 三頭谷鷹史(美術評論家) 夏目漱石の病、暴力、アウトサイダー・アート
第3回 2016年6月19日 田中美智甫(いけばな/嵯峨御流) 花手前(はなてまえ)
第4回 2016年10月2日 三頭谷鷹史(美術評論家)
               夏目漱石の病、暴力、アウトサイダー・アート(2)
第5回 2016年11月27日 大嶽恵子(美術ウオッチャー) 公共空間の彫刻像について考える
第6回 2017年2月26日 松永直幸(鉄道史学会会員) 濃尾地震の痕跡と慰霊・記念の表現
第7回 2017年4月16日 三頭谷鷹史(美術評論家) 美術の終末、芸術の終末
第8回 2017年6月25日 三頭谷鷹史(美術評論家) 続・美術の終末、芸術の終末
第9回 2017年9月3日 鈴木敏春(美術批評/NPO愛知アート・コレクティブ代表)
               「アール・ブリュットをめぐって」
第10回 2017年11月19日 「大雑談会」
第11回 2018年2月25日 肥田木朋子(元・財団法人かすがい市民文化財団学芸員)
                 実用とアートの共存から見る「書」